第13話

 

三条兄弟が暮らすのは、瀬城駅西口に面したそれなりに値の張るマンションだそうだ。
費用はほぼ全額慧哉持ちで、場所を決めたのも彼。と聞くと、勇哉が兄の家に置かせてもらっているようだが、実際は留守にしがちな慧哉が部屋の管理を弟に頼んでいる状態らしい。

駅前なら、絢世も杏輔も帰り際に寄ることができる。翠羽はクローヴィスに迎えに来てもらう必要があるが、連絡をしたところ快い回答が返ってきたため、3人そろって勇哉の厚意に甘えることになった。

「それは良いが、萩野。今日のテストも結果は良くなかっただろう。復習も忘れないように」
「う、はい・・・・・・」

忠告を最後に、クローヴィスとの通話を切る。ちょうどそのタイミングでバスが停留所に滑り込んできた。

「なんだ、テストの点が悪かったのか」

隣の席に陣取った杏輔がしかめっ面をする。

「そう・・・・・・。キョウちゃんに教えてもらおうと思って、昨日忘れちゃったんだよね」
「そろそろ中間テストだぞ。本来ならこんなことに関わっている場合ではないんだがな」
「どうする? キョウちゃんは帰って勉強したい?」
「お前に心配される覚えはない」

と強がりつつも、遠い目で揺れる景色を眺めている彼だった。

その同じバスの中で、絢世は勇哉に今度こそこれまでの経緯を話し終えていた。説明しようとするとこんがらがるため、翠羽と出会ってからのこと全てを順番に羅列した形である。

座らず通路に立っていた勇哉は、それを聞き終わって、ふと思い立ったように口を開いた。外の眺めに没頭している翠羽を指す。

「こいつは、剣の達人とかじゃねぇんだよな?」
「え、さあ・・・・・・」

印象としては、普段の翠羽からそんな雰囲気は微塵も感じられない。
不可解そうな勇哉と、彼に倣った絢世の、二人分の視線に気づいて、話題の中心である彼はきょとんと首を傾げてみせる。

「・・・・・・さっきはこいつもアレだし、俺は剣道のルールなんて無視でケンカのつもりだったんだけど」

物差しという単語は伏せる勇哉。思い出したくないのだろう。

「ここぞって場面で大振りになる。師範にも注意されてる俺のクセなんだが・・・・・・、さっきのはどうもこいつ、それを見抜いてて、誘われた気がするんだよな。まさか一目でクセを見抜いた訳じゃねぇよなぁ」
「単なる負け惜しみだ。負け犬め」
「キョウちゃんってば! ごめんなさい。たぶんイライラしてるんです」

こちらを見もしないで放たれる杏輔の暴言。最近、彼の八つ当たりが増えたのは気のせいではないと思うのだが。

怒られるかとひやひやする絢世の心に反し、勇哉はそれを「そうかもな」とあっさり認めると、終点の瀬城駅より一つ前のバス停で、一行に降りるよう促した。