第14話

 

雨戸がぴったりと閉ざされた空き家は、どこか人を寄せ付けない、寒々しい印象を周囲に与えていた。庭の桜がすっかり花を落としているのも、その一因かもしれない。
すぐに違和感に気づいた朱玉がぼそりと呟く。

「……こんな時間まで雨戸閉めっぱなし? おかしくない?」
「寝てるんだと思いますよ。紫響さんのことだから、花嵐にテンション上がっちゃって、夜更かしでもしたんでしょう」

躊躇うことなく縁側へ歩み寄った黄雅は、雨戸を引き開けて、中へ声をかける。

「おはようございます、紫響さ……」

言葉を途切れさせた彼は、次の瞬間、血相を変えて空き家へ飛び込んだ。

「紫響さん!」
「黄雅、どうした」

異変に気付いたリェールが縁側へ足をかける。翠羽たちも、戸惑いながら後を追った。
覗き込んだ部屋は、おびただしい量の赤い何かで、畳が一面汚れていた。遅れて鼻をついた臭いで、血だ、と頭が理解する。ひっ、と橙珂の息を飲む声が耳に入った。

「なんだこれは……。紫響!」

低く叫んだリェールが部屋へ踏み込もうとした時、ふらりと部屋の奥から黄雅が姿を表す。虚ろな目をした彼は、手に細い鎖をぶら下げている。

「……寝室に、これが」

蹄鉄に蔦が絡んだ意匠のネックレスは、血にまみれて輝きを失っていた。
リェールはそれを受け取らず、黄雅を突き飛ばすようにして部屋へ上がると、紫響の名を呼びながら中へ踏み込んで行った。鎖を再び握りしめた黄雅が、泣き出しそうな顔でその後に続く。

翠羽の隣で、どさりと音がした。見ると、白羚が気を失って倒れている。

「白羚……」

翠羽が手を伸ばすより早く、朱玉が歩み寄って細い少女の体を支え起こす。

「翠羽、君は大丈夫?」
「私は……」
「大丈夫じゃなさそうだね。それじゃ、白羚をお願い。僕はちょっと治安部の人たちを呼んでくるから」

そう言って、力を失った白羚を翠羽へ預けると、彼は早足で庭を出て行った。途中、橙珂を抱きしめた碧珠にも声をかけていく。この場では、彼が一番冷静さを保っているようだった。

やがて、駆けつけた治安部の大人たちが黄雅やリェールと一緒になって家中を探したものの、結局紫響の姿を見つけることはできなかった。